ある暮れの日のこと。
今年は暖冬だというのに、この日ばかりはとても冷える。足元が寒い。純弘はコートの首元を左手で押さえ、背中を丸めながら歩く。革靴で踏むアスファルトが、一足一足凍えるようだ。
寒さが、純弘の思考を奪っていく。「寒い寒いさむいさむい・・・・」
傘を差した大学生のカップルとすれ違う。そう云えば、曇り空はだんだんと厚くなり、雪の混じったみぞれのようなものがポツポツと降り始めている。
まったくなんてこった
堪え性のない純弘には、この寒さはもう耐えられなかった。投げ出してしまいたかった。歩くのをやめて、道路に寝そべり、車が通りかかるのを待つ。数分もしただろうか、道路の純弘に気づき、車が止まる。ドライバーが降りてくる。バタン、とドアが閉まる音が聞こえる。
ドアの閉まる音からして、なかなかの高級車だ。
だいじょうぶですか? どうしましたか?
覗き込むドライバーの首を、つかみ、道路に倒す。髪の毛をつかみ、顔面をアスファルトに叩きつける。鼻が折れ、額が血まみれになり、しばらくするとうめき声がなくなった。
まだ落ち着かない。純弘は懐から38口径のピストルを出し、背中に一発お見舞いする。ついでに、遠巻きに見ている数人の群集に向けて数発発砲する。
パン パン パン
乾いた音がする。
買い物帰りの中年女性がドォと倒れる。残りは逃げてしまった。
バタンといい音をさせて、純弘は車に乗り込む。ピカピカに磨かれたクリーム色のトヨタの高級車。しばらく行くと、若い女性の声「次の信号右折です」
運転手の自宅だろうか、ナビゲーターが、目的地までの距離と、方向を教えてくれた。
あぁ、まったくこれはもう
後部座席をみると、AK-47マシンガンと弾薬が置かれている。
いったい何人死ぬというのか。全く、最近の治安の悪さ、風紀の乱れときたら。あと、冬の寒さ。