今日は不思議な日だった。
印象的な場所や人に出会って、印象的に時間を過ごした。できるだけ忘れたくないと思う一日だった。

山の中の奥の奥の奥の、ほとんど壁みたいな坂道を登って古い神社にたどりついた。1300年前ぐらいに起こった飢饉とか、疫病なんかから、民人たちを守るために作られた神社らしく、今は使われていない苔むした石段の脇に千年杉と呼ばれる巨木があったり。
誰も訪れる人はいないだろうと思うに充分な険しい道のりであったにも関わらず、神社にはおじさんがいて黙々と藁で何かを編んでいて、「お話をお伺いしてもよろしいでしょうか。」って僕は丁寧に話しかけて神社のことを教えてもらった。
蚊取り線香の匂いがしていた。

帰りに立ち寄った遺跡のある丘からは、周りを取り囲む山と、なんでそんなとこにあるのかわからない立派な湖と、太陽は傾くし、遠くに町がかわいらしく身を寄せ合ってるのが見えるし。
僕は芝生のその丘で寝転んで雲や、方々で波紋が生まれるその湖や、遠くの道を一直線にラジコンみたいに走る車なんかを眺めて、涼しくなるとヒグラシの鳴き声に囲まれてた。

背中の草はちくちくするけど、この下には古代の遺跡があって、でも全然関係なくほとんどただの土で、となりのあの山が僕の腕みたいなもんで、僕の胸の上にはあの湖がちゃぷちゃぷ水を貯めていて。って具合に自分を拡大させながら、そうやって広がっていけば空や雲なんかとも対等に話せるって考えて。そのうちうとうとしてた。

夏っていうのは僕にとっては、山の上に姿を消すあの太陽とか、そのうちに山が影に覆われて鳥が鳴きながら友達たちと家に帰っていって、蝉の鳴き声があちこちから湖の波紋みたいに浮かんで、鳴り続けて、身をおこせば草の匂いや水の匂いに気づいて。
丘を降りるとまだ明るいってのに子供たちが花火を始めて、火薬の煙がカーテンみたいに行く手を遮ってるし。僕はなんにも感じない風にそのカーテンをくぐって、そのくせ全然その光景が忘れられない。

こんな夏のかたまりみたいな日が2013年の7月12日にあったってことは、できたら覚えておいて欲しい。