beer

2018年9月17日

僕の缶ビールをめぐって二人が撃ち合いをはじめた。こういうのはやっぱりよくない。せっかく久し振りに集まったのに。なにも殺し合いをすることはない。だいたい拳銃なんてふたりとも何処で手に入れたのだろう。
とにかく戦いははじまってしまった。ドン・ディン・ドン。太鼓はもう鳴らされてしまったのだ。 木本は机の陰から身を起こしてつづけざまに6発、こたつのあたりに撃ちこんだ。こたつ布団が跳ねて白い羽が舞う。吉岡があのままこたつの中で弾をこめていたら間違いなく何発か当たってる。吉岡はそんなに体が丈夫ではないのだ。大丈夫だろうか。木本はいそいで弾を込めている。木本の鉄砲は西部劇にでてくるようなリボルバーだからさっきの6発で弾切れなのだ。 木本は弾をこめるともう一度こたつに撃ち込むつもりのようだった。やっぱり吉岡はこたつの中には隠れるべきじゃなかったのだ。中に入って隠れてるような気になってもやっぱり布団だから。弾が貫通してしまうじゃないか。吉岡には昔からそういうところがある。ちょっと抜けているのだ。
そしてやっぱり木本は容赦ない。弾を込め終えるとまた机から身を乗り出して、今度はゆっくりとこたつに狙いをさだめた。右手の平で撃鉄をおさえている。木本の鉄砲はオートマチックではないから一発撃つ度にこうしてぺたこんぺたこんと撃鉄を落とさないといけないのだ。スタイルにこだわる木本らしい鉄砲と言える。 ぱんぱん。ぱん。 また6発全部撃ちこんで勝負を決めようと思っていたのだろう。突然こたつ布団の真ん中あたりから轟音とともに羽毛がふきだした。ひらひら。舞っている。吉岡のマグナムだ。象の脳みそも吹き飛ばせるというミサイルみたいな鉄砲なのだ。こういう見栄も信条もなんにもなさそうな鉄砲はがぜん吉岡むきだ。
こたつ布団の中からのめくら撃ちであったにもかかわらずなかなかいいところを狙っている。木本は「うわっ」と叫んで机の下に転がりこんだ。幸い命中はしてないようだったが紙一重というところである。吉岡は全然元気だったのである。もっぱら死んだフリが得意な男なのだ。
「わっはっは」とこたつ布団のなかからくぐもった声がした。もそもそと布団をかきわけて吉岡が出てきた。顔にいっぱいゴミがついている。どうやら畳の下に隠れていたようだ。

僕は机の上のキリン一番絞りを眺めた。よく冷えている。缶には水滴が走っている。見るからにうまそうだ。だからやっぱり「たかがビールで」なんてことは言っちゃあいけないのかもしれない。それにしても二本あるのだから一本ずつわければいいのに。 (K)