秋の夜

2018年9月17日

こういう虫の鳴く草むらにひとりで座ってると地球に根っこがはえたみたいになって気持ちが良い。銀河鉄道を待ってるような夜やし、怪人二十面相を小林少年が待ち伏せするんにぴったりの闇や。誰ともつながってないみたいに孤独で、いろんな人が見ててくれてる気もする。安心。
たばこぷかぷかふかす。飛行機のライトがぴかぴかして飛んでる。ゆったりと風が流れる。
たばこの煙が行ったりきたりする。草の匂いがする。
戦争のこと考えるねん。今もどっかで爆弾がはじけてる。誰かが傷ついてる。

ここからは遠くの街の明かりが見える。いっこずつが街灯かもしれへんし部屋の明かりかもしれへん。誰かがその下におる。会ったこともないけどだれかおんねん。
遠くの音が聞こえるのは風のせいなんかな。貨物の電車が走ってる。タタカタン。タタカタン。言うてる。

アザラシのこと考える。北極の氷の下でアザラシは息をするための穴を探してる。冷たい海の水やけど、アザラシの体はまるっこくて脂肪いっぱいついてるから結構大丈夫やねん。
そろそろ苦しくなってきた。穴から顔だして冷たい北極の空気吸わなあかん。

オーロラっていうん。ひらひらしてる。神様が見てる。
穴のそばではシロクマが待ってる。まるっこくて脂肪がいっぱいついたアザラシが顔だすのをじっと待ってる。顔出したらそのぶっとい腕でいっぱつがつん!とアザラシの頭どやしつけたんねん。もぐら叩きみたいなもんや。じっと待ってる。

僕はこの草むらにおる。 銀河鉄道は男の子一人のせてまた走っていった。怪人二十面相はうまいこと小林少年だまくらかして逃げてしもた。
僕はまたたばこに火をつけてぷかり。

北海道の牛はもう寝たかな。それとももう食べられてしもたかなあ。生きてたらきっと今もよだれ垂らしてる。口もぐもぐさせて夢見てる。

足もとの雑草を引っこ抜いて匂いをかいだ。根っこのところには土がついてる。こんなんうまいんかなあ。

インドの路上で生活してる人のこと。救急車のサイレンの音。ワインは今も熟成を続けている。

僕は今この草むらにおる。あんたが来るん待ってんねん。