スパイになれるかもしれへん。
僕はある日ものすごいことに気づいたのだ。毎日毎日いろんなことに気づく我が人生ではあるけれどその時に気づいたことはものすごく愉快でショッキングなことだった。
僕は「スパイ大作戦」を見ていたのだ。テレビシリーズもので正しくは「新・スパイ大作戦」と言う。
スパイはかっこいい。僕はスパイになりたい。でも、正直なところ怖い。失敗したら死ぬからだ。
僕の毎日も結構しんどいし仕事となると緊張の一瞬もある。みなさんもあるでしょう?僕の仕事というのは「人生で一度きりの晴れ舞台(披露宴)」の演出であるので、再生のボタンなんか押すときは結構緊張するんだよ。一番こわいのは違う曲をかけてしまう。ということなんだけどね。でも、たとえばもっとも感動的・叙情的。なんというか「お母さん。育ててくれて本当にありがとう。」なんてことを言って涙を流している「ご両親様への花束贈呈」の場面で「お子様からの花束贈呈」のテーマソングである「ミッキーマウスマーチ」などをかけてしまったとするでしょう。本当は「渚のアデリーヌ」をかけるはずやったのに!しまった!というようなことも起こらんとも限らんわけです。
そうするとどうなるかと言いますと、せっかくの新婦の涙も新婦の両親の涙も、会場の雰囲気にのまれてしまった新婦の友人達の涙も、一瞬で乾いてしまうのだ。「涙」的な雰囲気(俺様の演出)はある種の催眠であるのだけど心を捉える力はあまり強くないのだ。一度乾いてしまった涙はおそらく曲をかけかえてがんばってボリウムをあげてみても決して戻りはしない。かえってシラけてしまったりして。ね。こわいでしょう。他人とはいえ「一生に一度の晴れ舞台」なのだ。一日に何回もやることじゃないと思います。社長。何回もやらすな。と言いたい。
そういうわけで僕だって結構がんばってるのだ。だけどね。スパイはそれどころじゃないわけですよ。なんせ失敗したら殺されるねん。おお!僕の再生ボタンの緊張などなにほどのものか。僕がたとえば曲をかけまちがえても、たとえば最悪なことに本番中に天井に吊ってある1Kワットのスポットライトを落下させたとしても、あー。あとたとえば本番中にどうしてもイライラして「きゃあー!」とか叫びつつ地団太を踏みまくったとしても、そんで新郎の父親のハゲあたまに噛み付いたとしても。僕は絶対に殺される事はない。絶対にない!すごいでしょ。
「どんな失敗をしても殺されることだけは絶対にない。」
これだけは確信をもって言えます。そしてこれがスパイという職業との本質的な違いであるのだ。スパイってすごい。僕にはなれない。何回失敗するかしれたものではない。隠れていては見つかる。忍び込んではみつかる。金庫のカギを開けたら警報が鳴る。変装してバレる。毒は気づかずに飲みほす。やあ、だめだ。と思っていたのです。でもね。発見したのです。教えてあげましょう。
「スパイは失敗するまでは失敗しない。」
そして偉大な発見でありなぐさめであり希望であることは
「スパイは失敗してからは絶対に失敗しない。」
ということであるのだ。おお!希望が!わいてこんか? それはね、こういうわけです。
敵にみつかったり変装がばれたりしたら確実に殺されるわけやねん。次の朝にはユカタン半島の浜辺に打ち上げられるわけですよ。ちうことはですね。スパイが失敗するのはそのスパイ人生において1回きりなんだよ。次の失敗はない。心配せんでよろしい。ということです。
僕もスパイなれる。失敗なんかこわくないでしょう。なんせ1回しか失敗はせえへんねん。間違いない。失敗したら死ぬ。失敗するまではスパイ。1回失敗するまでは完璧なスパイ。
どきどきしますね 。