鉄道模型
僕はいつも兄の真似をしていたので、小さなころは電車が好きだった。たぶんそんなに好きじゃなかったのだけど。兄と電車の写真を撮りに駅にでかけていた。
自分が電車をそんなに好きじゃないという事に気づいたのはいつごろか。ぜんぜんわからないのだけどただ鉄道の模型をジオラマのなかで走らせているあのガラスのなかの世界は本当に好きだった。
電車博物館のような建物の中にレッサーパンダの檻ぐらいの大きさのガラス張りの部屋があって、そのなかには山があって町があって駅があって。電気仕掛けの鉄道模型が走らせてあった。そこには朝があって昼を過ぎ夕方がやってきて、オレンジ色のライトが山を染めて、やがて夜がやってきて。ちいさなライトを灯したブルートレインが走った。
ちいさな鉄道模型の窓から光がもれて、中にはいろんな人達がいろんな思いを抱えて乗っていた。家に帰る人もいれば、町から出て行く人もいた。家族連れの四人席の後ろには一人ぼっちの男が窓の外の山の景色を眺めていた。
ぐるぐるまわる、何度も駅を通り過ぎなんどもトンネルをくぐり。次の町から次の町へただ通り過ぎてどこでもないどこかへ行こうとしていた。
僕は夕方に光をともしだした普通列車が好きだった。それらが止まってしまったあと一つきりで走りつづけるブルートレインが好きだった。
だれも乗せずに走りつづける鉄道模型はほんとうにからっぽで、それでもそんなことはおかまいなしに同じスピードで走りつづける。やっぱり憧れる。